神奈川歯科大学 歯学部

21世紀型研究(1)

多くの患者様の生活レベルの向上に貢献

半田 慶介教授

しっかりとした顎の骨がなければ噛みにくい

重度歯周病などで多数の歯を失うと顎の骨も大規模で失ってしまいます。この状態を水平性骨欠損といい、十分量の顎の骨がないとインプラント治療が困難であり、義歯が安定しないため食事が取りにくくなります。
噛めないことは脳神経疾患や循環器疾患、腸疾患などの全身疾患に対する発症リスクを誘発するばかりか脳認知機能にも悪影響を与えると言われています(図1)。

図1

骨の再生技術の現状について

一部の失った顎の骨を治す治療方法は自家骨移植(自分の顎の骨や腸骨を移植すること)やバイオセラミックスをはじめとした骨補填剤や生物製剤(エムドゲインやリグロス)によって確立しています。しかしながら水平性骨欠損はアンメットメディカルニーズ(治療方法のない疾患)の一つです。

どのように顎の骨を再生させるか

骨が再生するためには、4つの要素①骨を作る細胞(骨芽細胞や破骨細胞)、②細胞が増殖できる環境(足場材)、③細胞が増えるための栄養(増殖因子)、④栄養供給のための血管(血管新生)、が揃うことが条件です(図2)。そこで私たちの研究グループは、高齢の治療対象者から負担が少なく容易に採取できる骨を作る細胞に注目して研究をスタートさせました。
現在、自己由来の骨を作る細胞と血管新生が可能な足場材を組み合わせて3次元的に立体的な骨を再生させるプロジェクトに取り組んでいます(図3)。

図2図3

半田 慶介 PROFILE

神奈川歯科大学卒業後に同大学大学院歯学研究科に進学。同大学院修了後、国立がんセンター研究所、北海道医療大学、東北大学を経て2020年に神奈川歯科大学大学院教授に赴任。20年に渡り歯周組織(セメント質や歯槽骨)や象牙質の再生研究に従事し現在に至る。